2011年08月26日

ブータンの話 その5 

ブータンの話 その5 
立てる予定は「覚えられる範囲まで」

 またほかにも、今のブータン人の消費行動の背景になっていると思われるブ
ータン人の哲学、行動様式があります。それは、刹那的に今を生きる、という
こと。

 初めてブータンに来たころ、オフィスに来て、ここでの働き方に戸惑いを覚
えました。ブータンの人たちのほとんどは、手帳もカレンダーも使っていない
のです。つまり、先の予定を入れない。予定は、覚えられる範囲でしか入れな
いのです。(覚えられる範囲というのは、だいたい翌日の午後ぐらいまででし
ょうか…)。このため、大人数が参加する会議をコーディネートするのはなか
なか大変です。

私 :「来週までにこれを決めなくちゃいけないから、早めに1度会議を開く
必要があるよね。いつにしようか」
同僚:「う~ん、みんな出席しなくちゃいけないもんね。みんながいる時にしよう」

私 :「いつ、みんないるの?」
同僚:「そんなのわかんないよー!(笑)」
私 :「え、じゃぁどうやって会議開くの?」
同僚:「え、だから、みんないそうな時に、オフィスを回ってみて、みんない
たら『会議しよう』って声かけて、集まるんだよ」

私 :「…」

 そんなわけで、会議1つ開くのも大変です。1~2週間先のことについて、
×月○日の△時に集合などと決めても、だれも「覚えて」いないのです(手帳
がないので、みんなメモしていない)。このため、会議を開きたい時は、みん
ながいそうだ、と思ったタイミングにオフィス中を駆け回り、「みんな、いま
会議室に集合して~!」と言わなくてはなりません。もしくは、翌日のことぐ
らいまでは覚えていられるので、前日に連絡し、直前にリマインドします。

 大臣や次官などの政府の高位の人になると、海外との付き合いも多いですし、
さすがに忙しいので、秘書がスケジュール管理をしています(中にはGoogleカ
レンダーを使っている人もいます)。それでも、入れられる予定はだいたい
1週間先までです。

 「2週間先となると、さすがに予定は立てられないよね~。そんな先のこと、
分かんないもん」とある次官は笑います。

 ブータンでは、時間というものが、抽象的なモノサシとしての概念ではなく、
すごく具体的なものであるのかもしれないとも感じます。
 以前、上司がこんな話をしてくれたことがあります。

 地方に行くと、何時何分、といった時間の感覚はない人も多い。例えば、あ
の山まで歩いて行くのに何時間ぐらいかかりますか、と地元の人に聞いたとす
る。彼は「さぁ」と首をかしげる。なので「1時間ぐらいですかね」と聞いてみ
ると、「あぁ、そうだね、1時間ぐらいかね」と答える。

 それで出発してみると、実際は丸1日かかってしまった、なんてことはざら
なんだ。でも、彼らに時間の感覚がないわけではない。例えば、彼らが「あぁ、
あの山まで行く間に、ちょうど牛2頭の乳が絞れるよ」と答えたとする。そう
するとそれは、ピタっと合っているんだよ


続く...........


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